Series No.91 中野 翔太

2013年12月15日に行われたアフタートークの様子をご紹介します。

Q.作曲もされるということですが、いつ頃からどんな風に、また一曲弾いていただけたら嬉しいなと思います。

作曲を始めたのは、小さいころからです。自宅にピアノがあったので、最初のうちは即興みたいな感じでバンバン叩いて遊んでいて。そこからすでに作曲みたいなことをしていたと思います。初めて曲らしい曲を書いたのは、13、14歳ごろですかね。今、一曲といわれましたが、実は本日演奏する「私のお気に入りの一曲」で、僕が編曲した曲を演奏しようと思いますので、それを聴いていただければと思います。

Q.ピアニストっていう職業柄、自分の楽器を持ち運ぶということはないと思うのですが、ピアノだといろんなブランドのピアノがあると思いますが、会場とピアノのメーカーとの相性みたいな、一口雑学のようなお話があれば教えていただきたいです。

先日、加古川で演奏したのですが、その時にホールにおいてあるピアノがべヒシュタインとスタインウェイが置いてありました。ピアノのメーカはいろんなメーカーがあります。例えばヤマハ、カワイ、スタインウェイ、べヒシュタイン、ベーゼンドルファーなどがあって、この間初めてベヒシュタインで演奏しました。ベヒシュタインの特徴はすごく繊細な音がしてタッチも全然違うんですよ。僕はいつもスタインウェイを使って練習しているのですが、タッチの戻りというか、それがベヒシュタインはまた違っていて、僕はちょっとびっくりしたんですけど。もちろんヤマハとスタインウェイというのも全然特徴が違いますし、今日のピアノは弾きやすくて鍵盤の反応もすごく良かったので、ホールも自分で聴いていても聞きやすいというか、そういったホールだったのでよかったと思います。もちろんホールによって全然違いますし、リハーサルでピアノの特徴やホールの響きを確認して、それで自分を合わせていく。そういったことはピアニストとして必要なことではないかと思います。

Q.健康管理に関しては、どのように考えていますか?

ピアニストは座らないと弾けないので、一日のほとんどを座って過ごしています。健康管理という意味では、僕はいつも不健康な生活をしているなぁと思っています。僕は自転車に乗るのが好きで、家の近くにきれいな並木道があるんですけど、そこで自転車で走るのがすごい好きです。週末はよく自転車には乗っていますね。健康法というとその位ですね。

Q.指のテーピングはいつも付けているのですか?だとしたら、いつごろからですか?また、付けている指と付けていない指があるのはなぜですか?

テーピングは最近付け始めたんですけど、これを付けていると弾きやすいというか、指がしっくりくる感じがします。それを最近発見して、それから付けています。付けている指と付けていない指があるのはそんなに意味はないです。

Q.テーピングの話なんですが、ピアノを弾いているとかなり指には負担になるものですか?私はギターを弾いているのですが、左の指が何回も弾いていると痛くなるのですが。

弾き方で力を入れて弾いていると指にも負担がくるので、それはいつも気を付けないといけないと思いますし、ピアノの場合は姿勢自体はすごく自然な姿勢というか。ギターとかヴァイオリンとかはこういう風な不自然な形になるので、そっちの方が、より指とかに対して負担が出るのではないかと思いますが、ピアノの場合は、ちゃんとしたテクニックで弾いていればそんなに指に負担はないと思います。とはいっても、7、8時間ぶっ続けでやると、どうしても負担にはなってくるので、そこは間に休憩をはさみながら、毎日練習するのがいいのではないかと思います。

以下は、当日のアフタートーク中にお聞きできなかった質問を、後日、中野さんにご回答していただき、掲載しております。

Q.弾いていて特に楽しい曲は何ですか?

正直に言いますと、弾いている間はどんな曲を演奏する時でも真剣に音楽と向き合っているので、楽しいということは無いですね。ただ、演奏が終わった後、ああ、楽しかったなと思う時はありますが、それは曲というより、その時の自身の演奏に起因するものです。

Q.特に極めたい曲、作曲家、時代、地域はなんですか?

どの作曲家、どの時代にも好きな曲、あまり好きではない曲はあります。単純にいい曲はいい、よくない曲はよくないということです。何かを限定するというのはあまり好きなことではないので、はっきりと回答出来ず申し訳ありません。

Q.ピアノを演奏する上で大切にしていることは?

澄んだ、透明感のあるクリアな音色を出すことは大切にしています。もちろん曲の構成やまとまりを考える事も大切ですが、聴衆と直接コミュニケーションをとるのは音なので、それが一番大切だと思います。どんなに深く曲を解釈しても、出る音が美しくない音だと聴衆の心には届かないと思います。もちろん作曲家や曲によって音色の種類は多少変えますが、基本的には澄んだ、透明感のあるクリアな音というのが、ピアノに限らず、美しい音なのではないでしょうか。

Q.グランドピアノの大きさからすると、今日の会場は小さい方だと思います。大きなホールと小さなホールでの違いを、弾く側から聴いてどのように違うか教えてください。(前半最後の曲の終わり方は、余韻が印象的で小さいホールで良かったと感じました)

演奏した時の音の広がりは弾く側から聴いても大きなホールの方がありますが、比較的小さなホールで演奏した時の、適度に伸びる音も魅力的です。当然大きなホールで演奏した時のような音の広がりはありませんが、よりダイレクトに自分の発した音が聴いている方に届く感じがします。

Q.クラシック以外に聴く音楽などあれば教えてください。中野さんにとってのクラシックとジャズについてもお聞きしたいです。

ジャズはよく聴きます。ここ数年はロバート・グラスパーをよく聴いていますね。今年の夏に来日した際にブルーノート東京でのライブも聴きに行きました。実は、彼はジャズとR&Bやソウルといったジャンルの垣根を壊して新しい音を探求しています。私はこういった姿勢に共感します。そもそもクラシックもジャズも根本的には同じもので、例えばラヴェルの曲にはジャズで使うコードが溢れんばかりに使われていますし、実際ラヴェルはアメリカを訪れた際ジャズに魅せられ、影響を受けています。これはクラシック、これはジャズといったように分類するより、もっと大きな視点から音楽を捉えた方がより深く音楽と付き合う事が出来るのではないかと思います。