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ハープ奏者 彩 愛玲


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2013年9月16日開催「絵本と音楽の世界」子どものための読み聞かせコンサート2013出演

「ハープの中にある祈りにも通じる音色は、とらわれない光のように、水のように躍動する」

ハープ奏者 彩愛玲(サイ・アイリン)

2013年7月東京都立川市にて

素敵なお名前ですね。
 私は日本生まれの日本育ちで、台湾人の祖父も14歳で来日してから生涯ずっと日本で暮らしました。だからみなさんとそう変わらないカルチャーを持って育っています。私の名前はそのまま向こうの発音で、「アイリン」というのは「玉が転がるように美しい声」という意味、祖父が声楽家だったということもあって、そういう意味合いの名前をつけたみたいです。

どのようなきっかけでハープを始められたのですか?
 5歳からピアノを習っていたのですが、小学生の頃、ある日テレビをつけたらグランドハープの演奏をしていたんです。それを見た瞬間に一目ぼれをして、「絶対これをやりたい」と思いました。でもなかなか先生に巡り合うことが難しくて、実際にハープの演奏を始めたのは14歳の頃です。その時にアイリッシュハープを始めました。当時は音楽学校でピアノを勉強していたので、趣味でハープをやっていました。それから、高校2年時にハープの魅力に本当に惚れ込んでしまって、ピアノ科で音楽高校に入ったのですが、転科試験を受けてハープ科に移りました。その時にプロになろうと心に決めましたね。

どれくらい練習をされているんですか?
 よくご質問を受けるんですが、テクニックの練習だけではなくて、それ以外にも聞いたり、頭で考えたりとか、楽譜を読み込んだりする時間だったりを入れると、時間があるときは3,4時間くらいとっていますね。

ハープの魅力と難しさを教えてください。
 ハープはとても原始的な構造を持っている楽器で、指で直接弦を弾きます。自分の内側にあるものが、よりダイレクトに表現できるというところではないでしょうか。あとは音色ですね。音の世界の中でもとても根源的な部分に人間を引き寄せてくれるという感じがして、そこも魅力だと思います。難しいところは、指で直接弦を弾くので、その時の自分が全部出てしまうということです。全部丸裸になるような感じです(笑)。ほかの楽器と同じかと思いますが、体調管理はもちろん、いつもベストな演奏ができるように日々心掛けています。
 最近はハープセラピーというジャンルがあって、アメリカではすでに確立されています。日本でもライセンスが取れるのですが、アメリカでは大きな病院のガン病棟などにはハープセラピストがいて、ベッドサイドでその人の為だけに即興演奏をします。私の独自の解釈としては、ハープは紀元前からありますから、人間のDNAの中に記憶があるのいだと思います。だから初めて聴かれた方でも「懐かしい」とか、「心が落ち着く」とか、どんなジャンルの音楽を弾いても、「すっと受け入れられる」、などと言ってくださるのだと思うんですよ。そういうところもハープの魅力ですね。
 一弦をポーンと弾くと、その音がすーっと消えていきます。ハープは弦を弾いたらその後は何もできません。ヴァイオリンなら指で今弾いている音に表情を付けられますが、ハープは弦を弾いたら、後は減衰するその響きを聴く。その音の中にすべてがあると感じたのです。だからみんなのDNAとか魂の中に何か感じさせるものがあるのかなと思いますね。

指先を使って演奏されますが、かなり力や体力は必要ですか?
 グランドハープは両手と両足を使って演奏します。楽器自体を体全体では支えていますが右肩に楽器をのせて、両足で楽器を支えるフォームをとります。高さは180cm程あって、重さは40kg位が基本、弦の張力は1t以上かかっているんです。ですから体力は使いますね。指先で直接弦をとらえるので、指先にも負担がかかりますし、あとは弦をはじく瞬発力。始めたてのころは指先に水ぶくれや血豆ができたり…みんなそれを通り越して学んでいくんですけど、もちろん私にもそんな時期がありました。

グランドハープとアイリッシュハープはどちらが難しいですか?
 どちらもそれぞれの難しさと魅力があるので比較はできないですね。グランドハープは西洋音楽の中で発展した最終形のハープで、7本のペダルと47弦を操るんですね。その音世界は、ハーモニーが複雑なものも弾けるし、技巧的、アカデミックで綿密に構築された音楽がすばらしい華やかな世界。それを演奏する難しさというのはありますけど。
 アイリッシュハープはずっとずっと昔からあるとてもシンプルな構造なので、グランドハープのようになんでも弾けるというわけではないんです、やはり民族音楽なんかを演奏するのにとても適している、キラキラした音色で音の通りが良い。シンプルなものこそ難しいというのはあります。一音一音の音色とか、限られた構造システムを最大限に使って音楽表現をするというところの難しさはあるんですけど、そこがまた、自分で工夫したり考えたりするのが楽しくて。どちらもそれぞれの難しさと魅力があります。

ハープ奏者 彩愛玲(サイ・アイリン)

1人で弾く時とオーケストラの中で弾く時とではどのような違いを感じますか?
 オーケストラで弾くというのは、その作曲家がつくった世界、作品をいかに再現するか、また大勢で演奏しているから、自分がその中のどういう役割なのかということとアンサンブルを意識して音を奏でるんです。ソロの演奏の時は、私の場合は本来自分がハープの何に魅力を感じているかとか、ハープで何を表現したいのかということを、最大に表現することを考えて弾いていますね。

どのようにして曲ができあがるのですか?
 私の場合は誰のためにとか、明確なコンセプトが自分の中であって、そのイメージを掘り下げていると、ふとした瞬間にメロディーの一部がひらめきます。日頃から、ふと感じた音を書き残したり、フレーズが浮かんだ時は書き留めたりしています。それを曲にしあげていきます。

志のぶさんと実際お会いして合わせてみて、変わった点などありますか?
 実際に志のぶさんにお会いして、お話しする時の声や抑揚を直接的に感じると、もっと自分の音楽を生き生きとさせようとか、自然に生き生きとして来るのですが、ここでこういう音を入れたいなとか、瞬間的に伝わってきて。生命力を感じますね、やっぱり人の声というのはパワーがあります。

お兄様(書案家)とのコラボレーションはいかがですか?
 私は兄のことを尊敬していて、昔はもちろん兄弟として育ったんですが、今は一人のアーティストとして兄を見ていて、彼の作品、哲学にはとても大きな刺激をもらっているんですね。私の音の世界を感じて作品にしてくれると、こんな風に世界が見えているんだなと思いハッとします。その作品を見て私も今度は即興演奏したりして、いつも相互作用で、作品を通してキャッチボールがあるというのはおもしろいですね。
 兄に限らず他のアーティストの方とコラボするときも同じように刺激を頂いています。
 前提として、お互いの波長が心地よいというところからの出発であることも私にとっては大切です。

他にもいろいろな方とコラボレーションをされていますが、これは珍しかったなというようなものはありますか?
 東京コレクションという大きなファッションショーでの演奏は珍しかったです。生演奏でファッションショーに音楽をつけたのですが、その緊張感はやはりすごかった。モデルさんのウォーキングのタイミングに合わせてフェードイン、フェードアウトする、DJとギタリストと三人のユニットだったのですが、とても貴重な体験でした。
 それから、ここ最近のパーカッションとの共演も非常に面白いです。古代からある古い楽器同士で奏でると、ハープの“静”、打楽器の“動”それはまさに「古代の光」。「陰陽」、「月と太陽」のよう。魂が躍動します。
 兄以外でコラボの素晴らしさを改めて感じさせてくれたのは…山田夕香さんというアクリル画を指で描く素晴らしいアーティストがいらして、その彼女とのコラボを機に、作曲をするようになったんです。彼女の書いてくれた絵にインスパイアされて曲を書く、そしてその曲を彼女にお渡しすると、それにインスパイアされてまた山田さんの作品ができるという形で。ずっとクラシックをベースに活動してきたので、自分が演奏する立場で“作曲”というのは恐れ多くて、簡単にはしてはいけないと思っていたんですが、彼女の後押しがきっかけで、小さい曲ではありますが、作曲というものをやってみるようになったり即興演奏をしたりするようになって、自分の中の世界が一気に広がりました。もっと自由に表現しよう!と。ジャンルを超えて活動したいという想いがあるので、いろいろなコラボをさせて頂けてうれしいです。

今後やってみたいことはありますか?
 いっぱいありすぎて(笑)。やりたいことは常に頭の中がパンクしそうなくらいあるんです。ハープというと私は吟遊詩人というイメージがどうしても強くて、中世の時代は馬に乗って小さなハープを背中に背負った吟遊詩人が旅をしながらその地方の出来事を王様に伝えたりしていて、私の中では人生=旅という感じなんです。だからハープを背負って、(今の時代は持ち運んで、ですよね)あらゆる場所に行ってハープを弾きたいです。
 “癒し”という言葉をあえて使わないでいますが、ハープにはもともとそういう力があるので、その側面からのアプローチもしたいと思っているし、即興演奏も更にしてみたいと思っています。自分の中のまだ眠っている所をどんどん覚ましていきたいです。

表現を磨くためにされていることや、重要だと思うことは?
 私は自分の内側とつながるということが大事だと思っています。ヨガとか瞑想とか好きなのですが、外に求めるばかりではなくて、自分の内側とつながると、答えがあると考えています。そういう状態に自分をするためには、自然とよくつながる事が大切だと思いますね。自然の中でお散歩をして、風の音や鳥の声を聴いたり、光を感じたり、太陽のきらめきを感じたり、水が流れる音を聴いたりすることで、自分を保っているというか、そういう時間が持てると、自分の中の声につながりやすくなる感じがします。

今回は読み聞かせとのコラボレーションをしていただきますが、以前にもそのようなコラボレーションをしたことはありますか?
 以前にフルーティストの方で朗読もされる方と共演したことがあって、「北風と太陽」とかおとぎ話に音楽をつけてコンサートさせて頂いたことがあります。あとは朗読劇、舞台での音楽というのはありますが、「1人の朗読×ハープ1本」というのは今回が初めてなので、とても楽しみです。

浜松は何度もいらっしゃっているということですが、どのような印象ですか?
 私は東京出身で、台湾にルーツがあるんですけど、浜松は第3の故郷という感じで、自分が住んでいるところ以外で一番数多く訪れているところだと思います。気候が暖かくて、人もみんな穏やかで、大好きな土地です。とても身近に感じています。また文化度がとても高く、土地柄、音楽に注ぐエネルギーとか関心度が高いので、そこで音楽ができることを、とても光栄に思います。

ハープ以外にもいろいろな楽器をお持ちのようですが
 音楽同様に民族楽器も大好きで、ご縁があり集まってきました。笑。ハープのルーツをたどってい調べると、もともとハープから発展して民族楽器になったものが世界中にあるので、そういう楽器に触れることで、自分の中の眠っている意識が芽生えるという感覚があります。

ハープ以外に今ハマっていることはなんですか?
 今はハーブを育てているんです。笑。自然の生命力は本当に美しくて、力強くて、尊いなと思うんですね。ハーブは食べるのも大好きなので、自分で育てたバジルとかミントでお茶を入れたり料理を作ったりするのは感激もの、ハマっています。

ハープには個体差とかはないのですか?ストラディヴァリウスのような名器などは?
 ハープは弦のテンションがとても強いので、何百年ももちません。楽器が弦に強く引っ張られている状態なので、40年くらいすると傾いてしまったり、音の出る板も張力に負けて膨らんじゃったりします。マリーアントワネットがハープの名手で弾いていた時代は、もっと弦のテンションが緩いので、今でもヨーロッパなんかに行くとオークションで出ていたりしますけど、それも割れていたりするんです。専門の職人が直すんですけど、ほとんど復元楽器という感じで、レプリカみたいになってしまうくらい改造しないといけないです。

どのようなハープ奏者になりたいとお考えですか?
 ジャンルを超えて活動しているので、そういう経験をたくさん蓄えて独自の音世界ができたらと思います。音を聴いたら「これは彩愛玲だな」と分かるような音の世界が自分の中から出てきたらいいですね。もちろんクラシック、民族楽器などを演奏するとき、それぞれの世界を尊重して演奏しますが、これまでに出会った沢山のアーティストの方々や、特にヨーロッパで出会ったたくさんのハーピスとたち。彼らの独自の音楽は一瞬で「あ!この人!」と分かる音楽表現を持っているので、素敵だなと思います。

9月16日の「絵本と音楽の世界」はどのような公演にしたいとお考えですか?
 みんなで一つになれるような空間なので、一緒にその瞬間の世界を作れたらいいなと思っています。松本志のぶさんの朗読、聴いてくださる方、それから絵本の世界、音と、その空間の中からその日だけに生まれるものがあると思います。絵本の世界はやっぱり素晴らしいし、お子さんはもちろん、家族で一緒にその経験が共有できるというのは一つの素敵な思い出になりますよね。素敵な思い出になるような温かいひとときにしたいなと思っています。
彩愛玲さんからのメッセージ

ハープ奏者 彩愛玲(サイ・アイリン)

東京都出身。台湾人の祖父は声楽家、、日本人の祖母はピアニストという環境で音楽に出会う。
国立音楽大学卒業。東京芸術大学別科修了。
2007年CD「花一輪」(King Record)よりリリース。
翌年東京文化会館(小ホール)にて初リサイタル。(東京音協主催)。
2010年銀座ヤマハホールにてハープのルーツを辿った「古代より続く波」をスタート。Artistの兄・亮陰とコラボ、中東シリアの作品を日本初演。
同年リリースしたCD「Rebirth」は「たまごくらぶ」にも掲載されるなど、
その音世界は多方面より注目されている。
JFW東京コレクション(ファッションショー)出演、
2011年NYにて911追悼セレモニーにて演奏、
2012年PARISにて日本文化紹介イベント(パリ市主催)にて演奏、また、
林雅行監督・ドキュメンタリー映画「老兵挽歌」「呉さんの包丁」テーマ音楽作曲・演奏。(2013年6月上映予定)
ジャンルを超えてハープの魅力を探求中。
http://saiailing.net/

絵本と音楽の世界 子どものための読み聞かせコンサート2013