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Vol.49 ザ・ミュージック・オブ・ウィントン・マルサリス

2002年8月31日
リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラ
ザ・ミュージック・オブ・ウィントン・マルサリス
ウィントン・マルサリス  マイルス・デイヴィスやデイジー・ガレスビーといった巨星の亡き後、ジャズ・トランペット界を背負って立つ存在になったウイントン・マルサリスが、クラ シック界にも名前を轟かせたのは、かれこれ20年程前になるだろうか、ハイドンやフンメル等のトランペット協奏曲のレコーディングをリリースした時のこと だった。クラシックのプロ奏者が演奏するのも決して容易ではないこれらの曲を、いとも軽々と演奏し、曲の持つ奥深いところにまで踏み込んでいたその様は、 当時かなりの衝撃をもたらした。元々マルサリスは、音楽学校の名門・バークシャー音楽センターとジュリアード音楽院で学んでいるのだが、当時のライナー・ ノーツには、マルサリスがこのレコーディングにあたり、マウスピースをクラシック向きの物に変え、解釈も含めて、数週間にわたってトレーニングに没頭した と書かれていたと記憶している。後にジャズとクラシックの両部門でグラミー賞を2度も受賞したが、これほどの才能の人が、その後20年間、常にこの「研 究・解釈と鍛錬」に専心する姿勢を崩さなかったこと自体が、マルサリスの最高の強みであり、最大の魅力かもしれない。
実際、マルサリス自ら音楽監督を務めるリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラとデューク・エリントンのオマージュとも言うべきCD「スウィンギ ン・ウィズ・デューク」をリリースした際も、編曲(マルサリスは多くの作品で作曲にも並々ならぬ才能を発揮している)からソロ回しに至るまでオリジナル演 奏を徹底的に研究し、NYの辛口の評論家諸氏を唸らせた。ただし研究と言っても、いわゆる「お堅い」アカデミックさは表面的には現れない。あくまで彼なり に消化され、高度に洗練された、「洒落た」演奏である。しかし、その根底に、音楽が「好きで好きでたまらない」というマルサリスの情熱が強く感じられ、そ れがジャンルを問わず多くの音楽ファンの共感を呼ぶのではないだろうか。
また、リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラは、あのニューヨークはリンカーン・センターの座付きのジャズ・オーケストラ。これは日本人の我々が 思う以上に意味があることかもしれない。例えば、ウィーン・フィルがウィーン・ムジークフェライン・ザールに、ロイヤル・コンセルトヘボウ管がコンセルト ヘボウに、ボストン響がシンフォニーホールをホームベースにしているのと同様の意味合いと価値をもって、リンカーン・センターに腰を据えている。アメリカ ならではのことではあるが、アメリカで生まれたジャズという音楽を、現存する偉大で大切な遺産として捉え、アメリカの芸術の中心の1つであるリンカーン・ センターにフランチャイズのオーケストラを作っているということである。つまり逆の表現をすれば、リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラは、アメリ カが生んだ最も偉大な音楽遺産の1つであるジャズを演奏する、最も代表的で権威ある団体の1つであるということになる。
少し世代の隔たりがあるものの、カラヤンとバーンスタインを失ったクラシック音楽界の小澤、マゼール、ムーティあるいはラトル等に、マイルスやガレス ビー亡き後のマルサリスを重ねては、様々な思いを巡らせてみるのも悪くない。


見どころ 聴きどころ
        by Minoru Harada 原田実(浜松ジャズ協会会長)
  多くの人はウイントンに対して、並外れた演奏技術の持ち主であるため、ソロイストとしてのイメージしか持ち合わせていないかもしれないが、すでにリンカー ン・センター・ジャズ・オーケストラ(以下LCJOと略)を率いて10年以上も「ジャズの伝道者・教育者」としての活動をしている。
この15人編成のビッグバンドは、高度なアンサンブルワークがこなせる、というだけでは無く、ひとつひとつの音に対するニュアンスの付け方、ソロのスタ イルなどに特有のノリを持っていて、全員が共通した音楽コンセプトを持っていることが分かる。録音のためだけに集められたメンバーでは出来ない業である。 実際、リズムセクション(ピアノ、ベース、ドラム)はウイントンや兄ブランフォードのコンボで活動しているメンバーで構成され、ホーンプレイヤーも彼の音 楽に心酔する、25歳から35歳のジャズ・エリートたちが中心となっているため、統一感のあるサウンドを実現しているのであろう。
彼らの基本になるコンセプトは「アメリカンクラシックとしての芸術性を持ったジャズ」であり、ロックの要素を加えたフュージョンや、現代音楽に近づきが ちなフリージャズとは一線を画し、ニューオリンズジャズを原点にしていることが分かる。アフリカ系アメリカ人によって成し遂げられた文化・芸術にこだわり と誇りを持つウイントンにとって、新進の作曲家による委嘱作品の演奏やシンフォニー・オーケストラとの競演など幅広い活動をしつつも、デューク・エリント ン、ルイ・アームストロングへの尊敬の念は強く、「ブルージー」なフレーズと「スウィング」はLCJOにとって重要な要素となっている。
それにしてもメンバーの若さと演奏技術の高さには驚かされる。彼らの経歴を見て気づくのは、ほとんどのメンバーに「幼少から楽器を演奏」「両親がミュー ジシャン」「音楽大学やプロアーチストから音楽教育を受ける」「クラシックからジャズまで」「アフリカ系アメリカ人」などの特徴を見ることができ、あまり にもマルサリス・ファミリーとの共通点が多い。これはまさにウイントンのクローンによるビッグバンドのようであり、抜群なアンサンブルは理解できる反面、 面白みにかけるのでは?という心配するむきもあろうかと思われるが、ご心配なく!ライブステージで聴衆を前にするとエンターテインメントと自由奔放さを発 揮するのがアメリカ人であり、ジャズメンの性(さが)である。まちがいなくホットなプレイが期待でき、なんといっても世界最高のトランペット吹きを生で聴 けるチャンスを逃さず足を運びたい。ビッグバンドファンのみならず、モダンジャズファン、クラシックファンにも自信を持ってお勧めできるコンサートであ る。

公演情報
2002年10月14日(月・祝) チケット好評発売中!
大ホール 14:30開場 15:00開演
S-7,000円 A-6,000円 B-5,000円(残席わずか) 学生-2,000円 (当日指定)


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