本文へ

バナーエリアへ

フッターへ



ホーム  > ギャラリー  > インタビュー  > Series No.95 長尾 春花

Series No.95 長尾 春花

9月21日に開催される「アクト・ニューアーティスト・シリーズ2014」の第3弾、ヴァイオリニストの長尾春花さんに「人生に影響を与えた人」や「音楽をやっていて一番辛かったこと」など、様々な体験について伺いました。

音楽って人に何か与えるだけじゃなくて、自分も音楽によって救われているんだ

――自分の人生に影響を与えた人はどなたですか?
ヴァイオリニストの二村英仁さんです。この方は日本人初のユネスコ平和芸術家で、私が10歳の時に二村さんが出演したドキュメンタリー番組を見て憧れを抱きました。二村さんは紛争が起こっている場所に自分の足で赴いて、子どもたちにヴァイオリンを奏でて喜ばせたり、実際にヴァイオリンを持たせて教えたりしていました。そういう活動をしている特集を見て、自分もこういうことをしたいなとすごく思って、そのころから馬鹿の一つ覚えみたいに「ユネスコ平和芸術家」になりたいと言っていました。

――なぜ二村さんのように活動されたいと思ったのですか?
ヴァイオリンをやっていなかったら医者になりたかったというのもあり、小学生のころから、図書館で地雷の被害を受けた人たちの写真や生々しい実情をよく見ていました。こういう人たちを自分の手で救える人になりたいと思って医者の道も考えましたが、色々考えて悩んだ結果、音楽でも救うことができるんじゃないかと思い始めました。この間の東日本大震災の時もそうでしたが、瞬間的に助けになるのは医者かもしれないですけど、継続的に人の気持ちを癒したり、支えになったりするのは音楽かなと思い、今は音楽でやっていこうと考えています。

――音楽をやっていて一番辛かったことは何ですか?
東日本大震災の直後に音楽が無力であるばかりか不謹慎とされてしまったことです。その後の演奏会はすべてキャンセルになって、今まで思っていたユネスコ平和芸術家とか、音楽で人を救うという夢が全部崩れました。実際そういうことが起こると、音楽は不謹慎って言われるんだと思ったら、何も手につかなくなって、ヴァイオリンを辞めようと思いました。それで学校も辞めようと思って、両親に相談して休学届を出そうとしたら、その次の日の朝に、家のポストに奨学金の合格通知が届いていたので、これは学校を辞められないなと思って続けることにしました。それから、震災後初めての京都でのリサイタルで久しぶりに人前で演奏をしました。それまでは練習も手薄だったのですが、リサイタルの時はすごく集中できて、体力は落ちてげっそりしたのですが、そんなのも忘れるぐらい自分の中からエネルギーが湧いてきました。音楽って人に何か与えるだけじゃなくて、自分も音楽によって救われているんだということを実感し、それからしばらくして、NPOの方々と一緒に被災地に行くようになってから、色々な話を聞いて、やっと音楽の出番だということがわかるようになりました。

――当日演奏するプログラムについて教えてください。
今回前半・後半と曲のタイプをはっきりと分けました。ヴァイオリンは楽器一つ持っていたらどこでも演奏できるので、被災地や発展途上国などに演奏をしに行くことに繋げたいと思い、大学院から、無伴奏作品を自分の中で深めることを自分の課題にしています。前半演奏するバッハとクライスラーとイザイは有名ですが、佐藤眞先生の作品は初めて聴かれる方がほとんどだと思います。佐藤眞先生は私が高校生の時の校長先生でしたので、私は先生の曲は知っていましたが、西洋音楽をやっていると、なかなか日本人の作品を演奏する機会がありません。同じ日本人として、しかも身近にいた先生である邦人の作品をこの機会に取り上げてみました。また、後半はデュオの作品を取り上げます。ヴィアルドの作品を絶対に入れようと思ったのは女性作曲家だからです。クラシックの作曲家で有名な作曲家というと、男性の作曲家が多いと思いますが、女性の作曲家も政治的な問題で世に出られなかっただけで、素晴らしい作品はたくさんあります。このヴィアルドの作品は親しみやすく優しい音楽なので、今回ヴィアルドを取り上げてみました。もう一曲のブラームスは名曲かつ一般的に知られているものを演奏しようと思ったのでこういうプログラムにしました。ぜひ、当日楽しみにしていてください。

プロフィール

静岡県掛川市出身。
2001年、江藤俊哉ヴァイオリンコンクールジュニアアーティスト部門最年少第1位。2004年、全日本学生音楽コンクール全国大会中学校の部第1位。毎日中学生新聞賞、都築音楽賞、兎束賞、東儀賞受賞。仙台フィルと若い演奏家によるコンサートオーディション(若草物語)合格。2006年、浜松交響楽団ソリストオーディション第1位。2007年、宗次エンジェルヴァイオリンコンクール第1位。仙台国際音楽コンクール入賞、聴衆賞受賞。日本音楽コンクール第1位。全部門の中で最も印象深い演奏に贈られる増沢賞、レウカディア賞、鷲見賞、黒柳賞受賞。2008年、静岡県文化奨励賞受賞。ロン=ティボー国際音楽コンクール上位入賞。2010年、上尾市栄誉賞受賞。仙台国際音楽コンクール第3位。優秀学生顕彰文化芸術分野大賞受賞。弦楽四重奏団「Quelle Quartett(クヴェレ・クァルテット)」として、緑の風音楽賞受賞。2011年、東京藝術大学内にて安宅賞受賞。2012年、2014年、東京藝術大学内にてアカンサス音楽賞受賞。
これまでに、東京交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、大阪センチュリー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉、群馬交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、神戸市室内合奏団、シンフォニエッタ静岡、山形交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、静岡交響楽団、芸大フィルハーモニア、フランス国立放送フィルハーモニーオーケストラ等と共演。
2009年よりアイワ不動産イメージキャラクターとしてCM出演。2011年より一般社団法人ふじのくに文教創造ネットワークのFCN音楽大使。2011〜2013年度、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション奨学生。2012年よりシンフォニエッタ静岡ソロ・コンサートマスター。
これまでに、篠田真美子、江藤アンジェラ、故江藤俊哉、景山裕子、沼田園子、ジェラール・プーレ、ボリス・クシュニール、青木高志、岡山潔の各氏に師事。現在、玉井菜採氏に師事。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部弦楽科を首席にて卒業。グラーツ国立音楽大学ポストグラデュアレ課程修了。東京藝術大学音楽学部大学院修士課程を首席にて修了。現在、同大学院博士課程在籍。

Copyright (C) Hamamatsu Cultural Foundation. All Rights Reserved.