浜松市天竜壬生ホール

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【イベント情報】歌劇ブラック・ジャックDVD上映会

【歌劇ブラック・ジャック】DVD上映会
2015年に世界初演した第7回浜松市民オペラ「歌劇ブラック・ジャック」ー時をめぐる3章ー
(宮川彬良作曲・指揮)の全幕をホールの大型スクリーンを使用し、DVD上映を行います。

日時:2019年11月4日(月・祝) 13:00上映開始
会場:浜松市天竜天竜壬生ホール
※全3幕3時間半の上映になります。(途中休憩あり)
鑑賞無料

電話 TEL.053-922-3301(天竜壬生ホール) にお申込みください。
※施設無料駐車場・臨時駐車場あり


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公演の詳細につきましては過去の公式ホームページこちらをご覧ください。



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とにかくこの世界初演「歌劇ブラック・ジャック」この人なしには企画し得なかった、
宮川彬良さんの公演時に配布したプログラムでの挨拶文をご紹介します。


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B.Jの山を登れ

僕はマンガが読めない。子供の頃、毎日通った耳鼻科の待合室でも・・・月一で行くいつもの床屋でも・・・僕はマンガを読まなかった。
理由は簡単である。
皆のマンガを読む、あのスピードに付いて行けなかったからだ。そして今でも僕は、自分のマンガを読むときのスピードこそが、正しいスピードである・・・と考えている。
たとえば手塚作品の「火の鳥」、「宇宙編」とか「未来編」であれば3日3晩。「鳳凰編」とかになると読むのに4日はかかった。
僕はただ素直に、手塚の読んで欲しいテンポで読んでいたにすぎない。画の変わり目、ページをめくるタイミング、セリフのスピードと言い方聴こえ方・・・そして何といっても「聴こえている音楽」に従っただけだ。かすかに遠く聞こえるトレモロ、厚みを増すオーケストレーション、セリフバックにあやしくうごめくストリングスや木管、そしてハープのグリッサンドとともにページをめくると、そこに未来都市。金管とティンパニーのフォルテシモが・・・
うわあ、いつの間にか遠くからホルンのメロディーが響いたところで、ハイ!次のセリフ、
どぞ!(そう、こんなことをやっていれば4日はかかる訳です)

さて、手塚たちマンガ家は、本当にそんなテンポ感でマンガを描いているのだろうか。僕は知っている。僕も物書きの端くれである。
そのくらいは分かる。彼等の描くスピードは、もっともっと遅い。それは僕の書くオーケストラスコアーに匹敵するのではないか。
「ジャン」という一瞬の響きに30分も1時間もかかることさえある。無造作にパラパラとめくるその1ページをひとコマを書き上げるのに、マンガ家たちが、それだけ密度の濃い時間を生きていることか。

密度の濃い時間・・・ひょっとして、それはオペラとイコールなのではないだろうか。

ということはオペラ=マンガ?
僕の解釈であるが、あながち間違いであるともいえまい。

室内楽の為のソナタ「ブラック・ジャック」は1999年宝塚文化振興財団主催の「アンサンブル・ベガ」の定期演奏会で初演された。
委嘱初演ではない。誰に頼まれた訳でもなく、この曲は僕自身が参画する室内楽団のレパートリーとして自主的に作曲された。
その何年後かに、これまた自主的に吹奏楽版を編曲し、旧知の出版社から出版してもらった。
初演は宝塚市のとある中学校の吹奏楽部である。そう、そもそもこの曲は手塚の故郷である「宝塚」で芽生えたのである。

それから十数年の間、僕は日本中でこの曲を演奏し続けた。
それは「音楽は命である」ということを証明し続ける旅でもあった。

いつしかこの曲のうわさが手塚プロダクションの耳にも入り、ゆるゆるとしたお付き合いが始まった。それと同時期だった。
ここ浜松市の市民オペラの担当者たちが、この曲をもとにオペラを作り世界に発信しよう、と言い出し盛り上がっているという。
本公演の台本作家であり、アンサンブル・ベガの知恵袋でもある響敏也氏を交えた酒の席での話ということだ。
その場に居合わせなかった僕は、あまりの事の大きさに戸惑った。
が、今思えばこの道のりは至極当然な一本道であった。

なぜならマンガ=オペラであるのだから。

もしも手塚治虫が作曲家だったら、こういう風に作曲したに違いない・・・という思いで作曲された初期の室内楽版「ブラック・ジャック」。
16年の歳月をかけて、今その命がオペラという「立体音楽漫画」に、原点に回帰しようとしているのである。

作曲家 宮川彬良



皆さん、オペラというと少し敷居が高く感じられる方も多いと思いますが、このオペラは純日本の作品として、前編を通し台詞はもちろん日本語。そして、コミカルな場面も随所に見られ、今までの「オペラ」と違う、きっと何か新たな感覚を味わうことができる作品です。その脚本を手掛けてくださったのが、響敏也さんです。

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~時の向こう側を聴く

 

宇宙が誕生する以前の、眼もくらむ「時」の向こう側、無の世界にも「時」はあった。
 人にも他の生物にも、時の移ろいは大事だ。瞬間が集まり時間となり季節となる感覚を磨くことは、生き残るため不可欠だったから。
 なのに、これまで人類の誰一人として「時とは何か?」に答えを見い出した賢者はいない。アインシュタインだって、「時の正体が解かった!」とは言っていない。
 うろ覚えで言うのだが、確か丸谷才一さんの随筆で読んだ話。散歩中、思わぬ道草をした詩人が、何時だろうか気になった。人に会う約束がある。詩人は道行く人に時刻を訊く...いや訊くつもりだった。しかし詩人は歩きつつ高邁な思索に耽っていた。世俗の単語が出て来ない。彼は「What time is it?」と訊くべきところを、「At time, What is it?」と訊いてしまった。
訊かれたほうは、しばし呆気にとられ、次に泣きそうな顔で「な、なんで私に、そんな難しいことを訊くんですか?」と言い残して、逃げるように駆け去ったという。
 無理もない。いきなり道端で「ちょっと済みません。時とは何でしょう?」と訊かれたら、逃げるか(54%)、笑ってごまかすか(32%)、無言で立ち去るか(14%)だろう(筆者調べ)。
 人類に身近な「時」、誰もが与えられる「時」は、しかし大切だけれど得体の知れない面妖な宝物として扱われてきた。いや、ひょっとすると「時」は人類の築いた社会で、最大最高の支配者だ。神か魔王だ。誰もこの厳粛な神に逆らえない。人生、すべて神か魔王の手のひらが舞台だ。生まれて、生きて、去りゆく。
 こんど新しく、あなたに届く歌劇は、「時」に独自の戦いを挑んだ手塚治虫さん、入魂の名作『ブラック・ジャック』から3作を選んでオペラ化した。若き日の人気と栄光と美貌を取り戻す執念に憑りつかれた老女優が挑む時との戦いが第1章「87歳の挑戦」。ぶっきらぼうで未消化な恋を、相手の体内の一部になり、同じ「時」を刻む事で完結する第2章「お前のなかの俺」。長寿社会の「時」と「命」の対立、その和解を見詰める第3章「母と子のカノン」。どの役柄の誰よりスターは「時」だ。
 幕が降りる時、あなたの胸の鼓動が「時」を刻む音に聴こえはしないか。それは「音」「ことば」「命」が奏でる、「時」の3部作だ。


響敏也



この歌劇ブラック・ジャックは響さんの言葉からもあるように、漫画ブラック・ジャックの全242話の中から「時」をキーワードとするエピソード3話を選んだオムニバス形式により書き上げられています。

第1幕 87歳の挑戦 ⇒ 漫画 第134話「あるスターの死」

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第2幕 お前の中の俺 ⇒ 漫画 第3話「ミユキとベン」
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第3幕 母と子のカノン ⇒ 漫画 第82話「おばあちゃん」
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原作の漫画以上に様々なキャラクターが登場いたしますので、ぜひそちらもお楽しみください。

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上映会が間近に迫ってまいりました。

今回、天竜壬生ホールで開催にあたってご縁を感じるのは、宮川彬良さんのお父様である、
故人宮川泰さんがこのホールのイベントで長らくお世話になっていたのです。
浜松市音楽文化顧問にご就任いただき、アクトシティポップスコンサートにご出演いただく
など、ご縁をいただいたのもこの地が始まりなのかもしれません。

今回の歌劇ブラック・ジャック。
とにかく音楽、演出、出演者とストーリー。市民オペラの域を超えた作品です。

圧巻のフィナーレまでどうぞお楽しみください。

更新日:2019年09月21日

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