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Series No.88 内匠 慧

2013年5月26日に行われたアフタートークの様子をご紹介します。

Q.ピアノの他にどんなことに興味をお持ちですか?
また、普段ストレス解消のためにどんなことをされていますか?


私は、あまりピアノ以外に特技というものはないのですが、常に何らかの本を読んでいます。でも難しい本ではなく、昔から図鑑とか読んでいます。ストレス解消法は、実はあまりなくて、ストレスにはかなり弱いタイプなのですが、しいて言えば、よく散歩をします。今、ロンドンに住んでいて、地図を持たずに歩いていると、方向音痴なので、たいてい道に迷って、2、3時間家に着くまでにかかっていい運動になります。

Q.感情表現の部分はどのように勉強されていますか?

感情表現はすごく難しいことではありますが、一つにはピアノ自体が打楽器ですので、どうしても自分の思った通りにコントロールすることがかなり難しいというのはいつも感じています。例えば、心にしみるような音を叩こうと思って叩いたら、ただ単に金属的な音が鳴ってしまったということがよくあって、どうすればどういう音が出るのかというのをピアノの機種によって鳴り方が違います。毎日学校の練習室で違うメーカーのピアノで練習しているのですが、そういったところでは、ピアノの音の出方を気を付けてやるようにしています。

Q.最初のプログラムにはショパンのソナタ第3番の予定でしたが、第2番に変更された理由を教えてください。

一番の理由は、叙情的な曲が(本日の場合は、グリーグにあたるのですが)細かく続いたので、そのあと、ショパンのソナタ第3番はかなり柔らかい感じの曲で、一方、第2番は葬送といわれるもので、グリーグの叙情的なリリカルな部分と対比するには第2番の方がいいのかなと思い、2週間ほど前にロンドンで自分のピアノの先生と話し合って変更することに致しました。

Q.「のだめカンタービレ」や「ピアノの森」等のピアノ関係の漫画から、コンクールに出るとか、みんなと競い合うといった、主人公の気持ちと合致するようなことがありますか?

「ピアノの森」は実はストーリーはあまり知りませんが、漫画の世界は若干誇張されていると思います。しかし、音楽家の典型的なパターンをよくキャラクターとしてとらえているのは事実だと思います。コンクールをやる目的に関しては、色々な立場の人がいて、今いる大学だと半数ぐらいの人が、実力はあってもコンクールはやりたくないからやりません、とはっきりそういう立場をもっている人もいます。そういった中でコンクールを受けている人は、良い結果でなくても、割り切れる人なのかな、っていう気はします。
私は芸大に3か月だけいて、そのあとロイヤルアカデミーに1年半いますが、そこを比べてみると、いわゆる「のだめ」体質という人は、確かに外国の方が多いかもしれません。ただ、外国だとどうしても、私の場合はイギリスですけど、基本的なところをなかなか指導してくださらないので、やはり上手な人はすごくまじめな人が多く、自分で基礎的なことを積み上げられる人が多いです。日本の場合は、もしかすると逆かもしれないですね。「のだめ」的な人が上手なのかもしれません。


Q.リサイタルとか本番をたくさんこなされていて、一度にたくさんの曲を持たないといけないと思うのですが、限られた練習時間の中でどのように練習されていますか?

実は、最近急激に演奏する曲が増えて、今月はとても幸運なことに5つのコンサートを演奏する機会をいただいているんですけど、準備はとても大変で、毎日頭はパニックになっておりました。
自分の場合は、下宿先にピアノがなくて大学の練習室を予約しないといけないので、どうしても練習時間が限られてしまいます。本当に切羽詰っているときは、練習はピアノを使ってやるというよりも、どちらかというと机でやるか、電車の中でやるか。今月は6回ヨーロッパと日本を行き来し、そういった中で、今、日本からロンドンに行く間にこの曲は暗譜しようという形で、楽譜をみて暗譜をするという作業をやるようにしています。でも本当に時間は足りていないですね。本当に上手なピアニストは2つ、3つのコンサートが開けるぐらいのレパートリーを常時持っているかもしれません。

以下は、当日のアフタートーク中にお聞きできなかった質問を、後日、内匠さんにご回答していただき、掲載しております。
Q.リズム感はどのようにしてつけられましたか?

正直リズム感はあまり良くなくて、ジャズのような曲は人前で弾けないです。今後つけていきたいです。

Q.楽譜はどのように覚えていますか?

シンプルな曲の場合は弾いていると自然に覚えていきますが、複雑な曲の場合は覚えないと弾けなかったりするので、譜読みと同時進行で暗譜をするようにしています。それでダメな場合は机に座って楽譜をじっくり見ながら覚えて行きます。

Q.暗譜で演奏するまでにどの位期間が必要ですか?(例:ヴァインのソナタ)

ヴァインの場合は比較的覚えやすい曲なので、譜読みした後1週間くらいで覚えていたと思いますが、曲によっては暗譜だけに1ヶ月くらいかかることもあります。

Q.PPがとても素晴らしかったのですが、何か音色を出す為の練習方法が あったら教えてください。

鍵盤をゆっくり押しすぎると音が鳴らないので、ギリギリ音の鳴る最低限のスピードをリハーサルの時にチェックするようにしています。そのスピードで押した時の音がそのピアノの最低音量なので、その音量を基準にしてP、PP、PPPの強さを作っていきます。

Q.イギリス留学で演奏に刺激になったことはありますか?

色々ありますが、中でもバッハなどバロックの演奏解釈が日本と違うのは印象的で、今後吸収して自分の演奏で表せるようにしていきたいです。

Q.本番緊張することはありますか?

自分がメンタル的に弱いのか、それとも誰でもそうなのか、本番で思いもよらないミスをすることが結構あります。事前の準備をしっかりして、本番の緊張を起こす要因をつぶしておければ一番良いですが、どこか曲の中に準備不足なポイントがあったりすると緊張して、自信のある他の箇所までダメになってしまうことがあります。

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