本文へ

バナーエリアへ

フッターへ



ホーム  > ギャラリー  > アフタートーク  > Series No.122 葵トリオ

Series No.122 葵トリオ

2020年1月19日に行われたアフタートークの様子をご紹介します。

Q.トリオでやっていて一番良かったこと。ソロではなく3人ならではの、良かったことを教えて下さい。

秋元:僕はピアノ弾きで、小さい頃からピアノと過ごしてきました。他の楽器は全く演奏できないので、音楽といえばピアノという存在でした。
この3人で演奏するようになって良かったことは、ピアノだけでは思い浮かばなかった弾き方や歌いまわしとかを指摘してもらえることですね。
音楽と向き合うときの視界がとても広がりました。それはこの3人でやっていて、個人的にはすごく変化したことですね。
たまにそれピアノにはできないよってことも言われますが、そういうものも含めて視野が広がったなと思っています。


小川:コンクールを受けに行ったときの話になるんですが。ヴァイオリンのコンクールだと1人で緊張して、その緊張を1人で噛みしめるみたいな感じです。ミュンヘンのコンクールを受けに行ったときは、仲間がいるという安心感がありました。
逆に自分がみんなに迷惑をかけてはいけないという緊張感は、もちろんあるんですけれども、信頼できる仲間と一緒に頑張っているというのが室内楽というか、この3人でいる良さかなと思います。


伊東:チェロのコンクールを受けに行くと、他の楽器のコンクールと違って、チェリスト同士その場で仲良くなって、飲みに行っちゃうみたいなことがあるんです。だからソロのコンクールでもあまり寂しくはないです(笑)。チェロ弾きはそういう人生なんです。でも練習の段階で一緒にやる人がいるというのは、本当に勉強にもなるし、嬉しいことですね。
あと、3人だとご飯などで意見が割れた時に、多数決をとると必ず決まるんですよね(笑)。
それがいいことかなぁと思います。


Q.ちなみに、3人の中でリーダーシップを発揮するのは誰ですか。

秋元:この質問は結構いろんなところで聞かれますが、基本的にリーダーはいないですね。
トリオに限らず、カルテットでもなんでもそうですが。誰かがリーダー的な感じで、その人にみんながついていけば、すごくいい感じになる団体もありますし、4人あるいは3人が対等な団体もあります。
我々はどちらかというと後者です。というのも、ピアノ・トリオというのは、3人それぞれが、主役にもなるし、脇役にもなるし、という関係性が最も対等な室内楽かなと思うので、必然的にそうなるのかと思います。


Q.伊東さんは似た名前のチェリストの方がいらっしゃると思うのですが、間違われたりしませんか。

伊東:あっ伊藤悠貴さんですね。本当にすごく似た名前の方がいらっしゃいまして。
とても有名で、イギリスで活躍されてきた方なんですが、年齢も3つぐらいしか違わなくて、よく一緒に演奏させていただいたりもしていて……そうですね。間違われることは、ありますね!!(笑)
「今度、読響と協奏曲弾かれるんですね!」と言われて、「それ僕じゃなくて、伊藤悠貴くんですね。」ということもありました。

Q.チェロの伊東さんはピアノのすぐ前に座って演奏されていますが、うるさくありませんか。

伊東:確かにヴァイオリンの位置よりは、チェロを弾いている位置の方がピアノの音が大きく聞こえるんですけれども、ピアノ・トリオのチェロが座る位置というのは、すこし繊細な問題でもありまして。
(ピアノ・トリオ自体が)チェロが少し聞こえにくい編成のアンサンブルです。チェロが正面に座って、屋根から少し外れるぐらいの場所に座るというのが、今のところ僕たちが定位置にしている場所で、それに慣れてしまっているので、(音量による)問題は感じていないですね。


Q.最初からその位置に決めて演奏していたのですか。

小川:割と最初からこの位置でした。トリオ・ワンダラーというピアノ・トリオのマスタークラスを受けたときに、この位置がいいんではないかと習って、3人で試したら、コンタクトも取れるし、チェロもお客様の正面を向くので音が飛びやすいとか、いい点が多いなと感じました。それ以来この位置で演奏しています。

Q.そのコンタクトの取り方ですが、アイコンタクトやブレス以外でうまいコンタクトの取り方はありますか。

小川:最終的な目標としては、空気を感じ取って弾くということをリハーサルからやってきているのですが。私個人は、合わせるのが難しかったり、ピッタリ合わせたいというときには、ピアノの鍵盤を見たり、チェロの弾く瞬間を見たりしています。

伊東:僕の座っている位置からだとピアノの鍵盤は全く見えないので、目線や、視界で合わせて、最終的には雰囲気ですね。
秋元くんの位置からも逆に僕の弓と弦が接するところは全く見えないのですけれども、僕にピッタリ合わせてくれるのは、空気感を共有できているんではないかなと思います。


秋元:逆に僕は見すぎると、そっちに気を取られて、いい音が出せなかったり、変な音がでたりとかがあるので。できるだけ、前後のつながりだとか、空気感やなんとも言えない間を大切にしますね。
でもそういう演奏は最初からやれていたわけではなくて。ずっと3人でやってきたので、なんとなく彼は次にこういう風に入る。彼女は次こういう風に入る。ということが分かるのも長くやってきたからこそですね。
それはこの3人だからできることであって、他の人とアンサンブルする場合はほかの方法をとるかも知れませんね。


Q.最初チラシを見て、ユニークなプログラム編成だと思ったのですが、選曲や曲順の意図はありますか。

秋元:プログラム・ノートにある通り、ピアノ・トリオという編成の魅力が伝わるプログラムにしたかったんです。
そのために各曲のキャラクターが被らないというのが大切かなと思いました。なので、劇的な感じのベートーヴェンとおおらかなブラームスと全く響きの違うラヴェルを組み合わせたつもりです。
他に今年は単純にベートーヴェンのアニヴァーサリーイヤーだし、とりあえずベートーヴェンは弾きたいというのもあったので、ベートーヴェンは必ず入れようというのは決めていました。

Copyright (C) Hamamatsu Cultural Foundation. All Rights Reserved.