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【ピアニスト】ダニール・トリフォノフ




2015年11月2日開催 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団出演
これまで数々の権威ある国際コンクールにて結果を残してきたピアニストのダニール・トリフォノフさん。
以来、世界各国で演奏会に出演、数多くのオーケストラとね共演を果たしてきた。
そんな才能あふれる若きピアニストが11月2日、アクトシティ浜松にてチェコ・フィルと共演。
公演に先駆け、お話を伺いました。

©Dario Acosta-DG

ショパン・コンクールから5年、チャイコフスキー・コンクールから4年が過ぎ、演奏家としての人生は、どのように変わりましたか?
 4年間が、あっという間に過ぎ去った感じです。ショパン・コンクールやチャイコフスキー・コンクールが、まるで昨日の出来事のように感じられます。この4、5年は、演奏活動にひたすら励んだ、とても充実した日々でした。なかなかまとまった休みも取れず、今シーズンやっと数日間のオフをとり、今アメリカでゆっくりとした時間を過ごすことができています。振り返るとコンクール直後の数年は年間100回コンサートを行い、今シーズンは120回の演奏会を行いました。

単純に計算したら、3日に一回!
  何よりも大変なのは、移動に時間をとられること。空港へ行ったり、飛行機を待ったり、空の上で過ごす時間とか…。そして移動先では時差もありますし…。

©Alexander Ivanov

日本はヨーロッパからもアメリカからも遠く、大変なのでは?
 それがね、日本はとても楽なのです!“慣れ”に必要な時間がかからない!私にとっては、旅が楽な例外的な国です。多忙を極めたこの数年の経験で分かったことは、コンサートに向けての充電期間がとても大切だということです。充電のための時間を、もう少しとったほうが良いのだ、と感じるようになりました。休暇は充電器のようなもの。今も僕は充電中です。ここの天気は素晴らしいし、しっかり充電していますよ(笑)!間もなく充電完了です!

©Vaclav Jirasec

数々の偉大なマエストロと共演されてきました。ビエロフラーヴェクさんとの共演は?
 実は、まだ共演したことがないのです。でも今回の日本ツアーで何回も共演させていただけることになり、とても楽しみにしております。共演はまだですが、マエストロには先日お会いしました。僕のプラハでのリサイタルにマエストロが来てくださったのです。その時に、プログラムの話などをしました。素晴らしいオーケストラと、素晴らしいマエストロとのステージ、とてもわくわくしています!

©Dario Acosta-DG

プログラムであるラフマニノフの2番ですが、あなたにとって、この曲の魅力は何でしょうか?
 何よりも、作品に込められた深い気持ち、感情が魅力的です。でも、その感情は、厳格なコンセプション(概念)の枠内に収まっていなければなりません。感情が先走ってはいけない、ということです。たとえば2楽章。とても深い、内面の心情をつづった音楽です。でもそこに、余計なセンチメンタリズムがあってはならない。厳格なパルス(テンポ)や、共通の動き、リズムなどが大切で、感情や気持ちがそこからあふれ出たり、流れ出たりしてはなりません。先走りしがちな感情に“手綱”を引く、と言いますか…。厳格なパルス、厳格な時間の感覚があって…(ここで2楽章の一部を歌ってくれました!)ラフマニノフ自身の演奏を聞いてもらうとわかります。きっちりとした時間の流れが、伝わってきます。

あなたが大切にしている音楽の“即興性”について詳しく教えていただけますか?
 僕が考える即興性とは、音楽を創る上で感じる今現在のフィーリングです。つまり、決して“再生”品であってはならず、新たに創られるものでなければなりません。こんな比較はどうでしょう?昆虫博物館に展示されている、蝶々の標本。どれも美しいのですが、それは命のない標本に過ぎない。自然の中で飛び回る、生きている蝶々は、形は同じでも全く違いますよね。即興とは、そういうことです。その場その場で臨機応変に動きが変わります。

©Dario Acosta-DG

即興のためには会場やその場の雰囲気も大切ですね…。
 ごもっともです。でも、肝心なのは、奏者の内面的な“軸”です。奏者自身が演奏しながら、何をどう聴きたくなるか、何を引き出したくなるのか、アイデアが次々とあふれてきます。それは同じ作品を弾いても演奏会によって毎回違ってきます。

本番前に行う習慣などありますか?
 特にないです。というのは、コンサートは、同じものは二度とない。繰り返されることはありません。毎回新しく、独創的であるべきです。演奏会の前も、最中も、後も、感覚はいつもまったく異なるのです。ただ、あえて言うなら、集中力を高めることでしょうか。コンサートの数時間前から、他のことに気を向けないように自分を仕向けます。それが唯一の習慣、というか心がけていることかな…。ツアーの時には食事にも気をつけますよ。そうそう、食べ物と言えば、プログラムによって、食べたくなるものが変わります!辛い食べ物が合うプログラムとか…(笑)
ツアーに出た時に、食事の他に気をつけていることがもう一つあります。それは運動。移動が続いたりホテルにずっといたりすると運動不足になりがち。そうすると、筋肉が固くなってしまいます。筋肉が膠着すると、音に影響する。より柔軟な音を出すためには、筋肉も柔らかく保っておかないと。体操とか、ヨガなどを時間があるとしています。

©Giovanni Caccamo

今後どのような音楽家を目指していきたいですか?
 今はとにかく、レパートリーを広げていくことです。シーズンごとに、新プログラムをしっかり準備する。間もなく新しいCDが出るんです。ラフマニノフの変奏曲集で、コレッリの変奏曲や、パガニーニ変奏曲など。僕が作曲した作品も入っています!録音にも積極的に取り組んでいきたいです。

ご自身の音楽観を高めるために、音楽以外で勉強したいこと、していることはありますか?
 ピアノ、音楽以外の芸術に多く触れるようにしています。どの分野もそうですが、たとえば文学と音楽、絵画と音楽など、密接に結びついています。ラフマニノフも、絵や文学に触発されて書いた作品、「死の島」とか「鐘」などがあります。教会音楽、宗教的な分野も、もちろんラフマニノフに大きな影響を及ぼしています。協奏曲2番には、宗教的なイメージもありますね。とにかく様々な形の芸術に触れ、知ることが大切だと考えています。

では最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
 また日本に行けることは、大きな幸せです!新しいプログラムをご披露します。ラフマニノフの協奏曲2番を日本で初めて弾けることも、とても楽しみです。日本の皆さんは、ラフマニノフの作品がとても好きですからね。
聴衆の皆さんもオーケストラもメンバーも、指揮者も、もちろん僕も、みんなが大満足するような演奏会になりますように!

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団