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【トロンボーン奏者】中川 英二郎


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8月31日に登場するのは、ネーミングが目を惹くその名も「侍BRASS」。ジャズとクラシックのトップアーティストが集結したこの金管アンサンブルを率いる、トロンボーン奏者の中川英二郎さんに、演奏スタイルや結成15周年を迎える団の魅力などについて語っていただきました。

侍BRASS(以下、侍ブラス)の編成や名前の由来を教えてください。

 トランペット4、ホルン1、ユーフォニアム1、トロンボーン2、テューバ1、パーカッション1の金打10重奏を最大編成として、金管8重奏な
ど様々な編成でコンサートをプログラムします。 ジャンルは、オリジナル・ブラスアンサンブル作品、クラシック・ジャズ・ポップス・アニメ・映画音楽などのアレンジ作品、ソロなど多岐にわたります。
 名前の由来は「これだけのメンバーが集まったのなら世界に通用する日本らしい名前を」と、世界的に知られた日本のキーワード「芸者・富士山・侍」が候補としてあがりました。 「芸者ブラス」も「富士山ブラス」もちょっと変だよねということで、「侍ブラス」に決まったのですが、当時は「SAMURAI BLUE」も「侍JAPAN」という言葉もまだ無く、ふざけたネーミングだと批判を浴びました。ちょんまげをつけるのかとか、羽織袴に脇差しをさして演奏するのかとか、周囲は言いたい放題でしたね(笑)。

トロンボーン:中川英二郎(楽団長)
トランペット:エリック・ミヤシロ、本間千也(東京佼成ウインドオーケストラ楽団員)
       澤田真人(東京交響楽団 首席トランペット奏者)
       オッタビアーノ・クリストーフォリ(日本フィルハーモニー交響楽団 ソロトランペット奏者)
ホルン:森博文(くらしき作陽大学 教授)
トロンボーン:野々下興一(東京都交響楽団 バストロンボーン奏者)
ユーフォニアム:齋藤充(フィリップ・ジョーンズ国際コンクール第1位)
チューバ:次田心平(読売日本交響楽団 チューバ奏者)
パーカッション:岩瀬立飛

他のブラスアンサンブルと違う侍ブラスの魅力は?

 一番の特徴は、クラシック奏者とジャズ奏者が同じアンサンブルを組んでいるところです。というのも、皆さんが思う以上にジャズとクラシックは真逆で、音楽的にも文化的にも歴史的な背景も全て反対のベクトルを向いています。両者が意気投合しても、いざやってみるとなかなかうまくいかないものなのですが、侍ブラスは卓越した奏者揃いでその違いを技術で埋めていけること、それぞれがお互いのプレイにリスペクトを持って歩み寄ることで成立しています。
 もう一つの特徴は、ユーフォニアムが入った金管8重奏を数多く取り入れている点です。金管アンサンブルというと金管 5重奏や10重奏が 定番で、ユーフォニアムは入りません。ところが、全日本吹奏楽連盟が主催するアンサンブルコンテストは8人までという規定があります。5重奏はどちらかというと名人芸の域のアンサンブル、かといって10重奏では定員オーバー…。多くのアマチュアの皆さんが10重奏の楽譜をむりやり8重奏に編曲して演奏するのを見て、それなら 8重奏のちゃんとしたオリジナル作品を作ろう。そして吹奏楽部の金管みんなのパワーを生かせるようにと、ユーフォニアムも標準装備しました。アンサンブルには不向きとされていた楽器ですが、金管の中でも群を抜いた運動性能の高さと美しい響きを生かして、私も含めた作曲家陣が試行錯誤してユーフォニアムをアンサンブルに取り込み、生かし方を考えたオーケストレーションを次第に習得していったように思います。
 あとは、エリックさんと私がいることで、クラシック奏者には難しいバリバリのアドリブが入った曲をアンサンブルとして演奏できることと、なんと言ってもエリックさんのハイノート(高音)がアンサンブルの中で炸裂する点ではないでしょうか。

侍ブラス楽曲に挑戦するアマチュアプレイヤーにアドバイスを!

 楽しんでいただければ、どんな曲でも嬉しいです。また、録音も併せて聴いて、楽譜づらだけではないイントネーションなど、ぜひ真似してみてください。

『龍神伝説』 『鳳凰の舞』など、楽曲に日本的な名称が多いのはなぜですか?

 侍ブラスという名前のイメージから、作品の源を日本の歴史や伝説に求めていく方が分かりやすいと思うからです。歴史に基づいた方がイメージは伝わりやすいですし、もし知らない名前が出てきた時は調べてもらうことで日本の歴史に触れる機会も持てますからね。

今年で結成15周年。振り返っていかがですか?

 デビュー公演は東京オペラシティのコンサートホールで、同時に「葉隠」という全編オリジナル楽曲のアルバムをリリースしました。業界関係筋からは「無名のバンドは小さなライブハウスから始めるもの」 「アルバム出すならカバー曲からだろ」「客が集まるわけない!」と叱責されました。実際、ホールは満席で「どうやって動員(招待客を集めた)したんだ?」と言われました。招待者なんて一人もいなかったのに!結成15周年を振り返って思うことは、前述のとおり、クラシックとジャズと いう真逆のベクトルを擦り合わせていくのが想像以上に大変だったということですね。良い意味でこの15年は妥協と歩み寄りの連続でしたが、だからこそ今のスタイルが構築できたと思っています。

10th CD『扇の的』
一般発売予定:2021年9月1日(水)

10枚目の新作CDのコンセプトは何ですか?

 一つは侍ブラス15年の歩みの総括です。これまでに取り組んできた、①金管8重奏オリジナル・アンサンブル作品 ②金打10重奏オリジナル・アンサンブル作品 ③クラシック曲のアレンジ作品 ④ジャズ・ポップス曲のアレンジ作品 ⑤オリジナル吹奏楽曲のアレンジ作品 ⑥アニメ・映画音楽のアレンジ作品 ⑦ソロ作品。これらの全てを一枚のアルバムに収めたいと考えています。もう一つは、新たに「協奏的アンサンブル」というテーマにも取り組みます。これは協奏曲でもなくアンサンブルでもない2つを融合した形の新しいジャンル。うまくいくどうかは分かりませんが、今この曲をまさに作曲している最中です。
        

今回のCD制作はクラウドファンディングによる企画ですね。

 もしかするとCDはこの先無くなってしまうものかもしれません。過去、LPが衰退した時はCDが新しいメディアとして台頭しましたが、現在のCDにはそれに変わるものがないのです。配信がそれに変わるものだと一般の方は思うでしょうが、配信で新作を制作するには莫大なダウンロード数が必要で、それだけでは制作費が追いつきません。今回の試みは配信とは異なるもう一つの現代的な手法だと思っています。
        

普段の生活で気分が上がるのはどんな時ですか?

 食べることと、旅をすることが好きなので新しい場所や美味しいものに出会った時は嬉しいですね。
           

ズバリ、楽器は何を使っていますか?

 私が監修したヤマハのYSL823G。実は30年以上、楽器の開発に携わっています。

YAMAHA ホームページより

    

金管楽器プレイヤーの未来についてどう思いますか?

 私は幼稚園の頃から金管楽器に接していて、小学校3年生の頃には父と一緒にプロのステージに立ち、小学校6年生の頃にはプロとしてスタジオレコーディングも行いました。その頃は小学生でちゃんと金管楽器を演奏できる人は殆どいなかったと思います。しかし、最近は幼少の頃から英才教育を受けていて、小学生でプロレベルのスーパーキッズたちがいます。彼らが順調に成長してくれれば、日本は世界の中でもトップレベルの金管大国になっていくのではないでしょうか。
          

今後の目標について教えてください。

 一つは、海外での演奏会開催です。そのために「侍ブラス」という名前をつけたぐらいですから!コロナ禍の現在ではなかなか難しいですが、近い将来実現したいと思っています。もう一つは、大上段に構えることなく静かにでも継続していくことです。企業でもバンドでも一番重要なことはどう継続させていくかだと思います。
          

浜松にはどんなイメージをお持ちですか?

 “餃子の街”を宇都宮と競っているというのが最近の印象ですが、世界を代表する日本のバイクメーカーやピアノメーカーが全て浜松発祥であるなど、“新しい産業を生み出すパワーを秘めた土地”というイメージです。アクトシティには何度となく来ていますから、どこに何があるか地図は要りません!
           

浜松公演の聴きどころを教えてください。

 「扇の的」は平家物語からその題材を得ています。侍がその語源である【さぶらう】用心棒から、兵士としての侍に進化した最初のトピックなので、いわば侍の原点のようなもの。私たちも原点に返って、新鮮な心構えでこの作品に取り組んでいきたいと考えています。他にも、緊張感のある切れ味鋭い侍ブラスサウンドの数々をお楽しみください。
          

最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

 ジャズもクラシックも垣根のない世界を存分にお楽しみください!最高の仲間たちと会場でお待ちしています。

侍BRASS-結成15周年記念公演-

2021年8月31日(火) 19:00開演 
●アクトシティ浜松 中ホール
●入場料(全席指定)
 一般 4,000円
 学生 1,000円(24歳以下)
 ※未就学児の入場はご遠慮ください。

公演の詳細は、こちらをご覧ください。